Q 放射化分析はどこで,どうやったら利用できるの?
放射化分析を行うためには,原子炉あるいは加速器が設置されている施設で試料を照射しなければなりません。共同利用ができる施設には共同利用掛などの利用受付窓口があるので,ここを通して照射依頼や測定・実験設備の利用申し込みを行います。施設の運転は年間スケジュールが決められているので,それを確認して利用申請したり,決められた書式の共同利用実験計画書などを施設に予め申請しておく必要があります。また,書類の申請時期が決まっている施設が多いので,受付窓口と事前によく相談しておくことを薦めます。 |
利用可能な施設と受付窓口 | ||
1. | 【 放射化学的および機器中性子放射化分析(RNAA,INAA)】 | |
照射設備:研究用原子炉 | ||
・ | 日本原子力研究所(原研[JAERI])(茨城県・東海村):JRR-3M,JRR-4 | |
研究炉部,東京大学大学院工学系研究科原子力専攻・共同利用管理本部(大学開放研究室) | ||
・ | 京都大学原子炉実験所(KUR)(大阪府・熊取)共同利用掛 | |
2. | 【 即発ガンマ線分析(PGA) 】 | |
照射設備:研究用原子炉 | ||
・ | 日本原子力研究所(原研[JAERI])(茨城県・東海村):JRR-3M | |
東京大学原子力総合研究センター・全国共同研究部門(大学開放研究室) | ||
3. | 【 光量子放射化分析(PAA) 】 | |
照射設備:電子線ライナック | ||
・ | 東北大学理学部附属原子核理学研究施設(核理研[LNS])(宮城県・仙台)共同利用係 | |
・ | 京都大学原子炉実験所(KUR)共同利用掛 | |
(マシンタイムの都度照射設備を準備することが必要) | ||
4. | 【 荷電粒子放射化分析(CPAA) 】 | |
照射設備:サイクロトロン | ||
・ | 東北大学サイクロトロンラジオアイソトープセンター(CYRIC)(宮城県・仙台)(学内共同利用施設) | |
・ | 日本アイソトープ協会 仁科記念サイクロトロンセンター(岩手県・滝沢村) |
----------以下,詳細版------------------
放射化分析を行うためには,共同利用施設の利用受付窓口に予め書類の申請や照射の申し込みが必要です。煩雑な書類作成の作業が放射化分析の利用を思いとどまらせてしまう理由の一つになっていることが多いと思います。詳細な手続きは施設毎に異なりますので,ホームページや利用案内を参考して頂くとして,ここでは,利用申し込みから実験までの一般的な手続きの流れについて説明します。 |
(0)事前打ち合わせ
(1)課題申込提出
(2)採択
(3)実験日決定
(4)放射線取扱講習(教育訓練)
(5)実験申込提出
(6)実験
(7)実験報告書提出
(0)事前打ち合わせ
共同利用施設には利用者の要望に合うように様々な照射設備や運転スケジュールがあります。例えば,原子炉では照射設備によって中性子束,照射可能な試料の大きさや,最大時間,カドミニウム比などが異なります。また,運転スケジュールによって低出力運転が行われることもあります。したがって,分析対象とする元素や試料の種類(岩石,植物,動物組織,有機化合物など),分析に供することができる量などから利用する照射設備や照射条件などについて考える必要があります。また,試料によっては照射が制限されているものもありますので,その共同利用施設の担当者と技術的な相談を行っておきます。また,費用や提出書類に関しては受付窓口に相談すると良いでしょう。 |
(1)課題申込提出
受付窓口あるいは,インターネットから共同利用を行うための申請書を取り寄せます。申請書には研究課題や研究目的,照射の種類と回数,共同研究者名などの研究計画を記入します。研究課題の公募時期は施設によって異なりますが,大半が年1回あるいは2回です。 |
(2)採択
提出された研究課題は,研究計画の妥当性などについて審査が行われ,その採否が利用開始前に通知されます。 |
(3)実験日決定
採択されたならば,次に照射を行う実験日を決定します。照射設備は利用期間毎に,共同利用可能運転,低出力運転など運転計画が立てられています。公表あるいは送付されてきた運転計画と自分達の利用計画を照らし合わせて希望を提出します。時期によっては照射や測定器,実験室の利用が集中することもありますので,予め,利用施設担当者と相談しておくのが良いでしょう。 実験日が決定したならば,所定の書類に利用を希望する実験日,照射設備などを記入して受付窓口に提出します。その後,共同利用施設の方で実験日の調整がなされて利用する実験日が連絡されます。 |
(4)放射線取扱講習(教育訓練)
放射化分析は放射性物質を取り扱うため,法令に基づき放射線取扱講習(教育訓練)を事前に受講しておかなければいけません。これは利用する施設毎,(利用年度ごと)に必要であり,所属機関や他の照射施設の講習で代用することはできません。施設によっては講習会をまとめて行っていることもあります。 |
(5)実験申込提出
照射利用日が近づくと,実験に関する詳細な申し込みを提出します。具体的には希望すうる照射時刻,照射時間,生成する誘導放射能の見積もり,測定機器の種類と利用時間,実験室の利用時間,共同利用宿舎の予約などがあります。照射試料を施設外に持ち出す場合,受け入れ出し,輸送などの手続きが必要となりますので,関係書類を提出しておきます。 |
(6)実験
試料を照射容器に詰めておきます。利用施設で実験日当日に詰められる場合もありますが,試料の漏れや容器の亀裂など,照射容器の試験を行うため,照射前日までに照射容器に試料を詰めて提出しなければいけない場合もあります。また,半減期が長い核種を測定対象とする場合,予め試料を詰めて送付しておき,照射日に照射してもらい,放射線量が低くなってから受け取りに行くと被曝線量を抑えることができます。 一部の照射を除いて,利用施設担当者に照射を依頼します。適当な冷却時間が経った後,照射した容器が渡されます。実験者が開封し,その施設で化学操作や放射線測定を行います。開封作業が施設を汚染する可能性が最も大きいので,十分注意してフード内で行うようにします。 |
(7)成果報告書提出
共同利用実験では,年度ごとに成果報告書の提出が要求されます。放射化分析の実験方法や分析を行って得られた結果について所定の書式でまとめ,提出します。 |
放射化分析の種類別に利用可能な場所と利用方法について,以下に簡単に説明します。
1.【 放射化学的および機器中性子放射化分析(RNAA,INAA) 】
中性子放射化分析では,試料を原子炉で照射します。現在,放射化分析として利用可能な研究用原子炉は日本原子力研究所(原研[JAERI])(茨城県・東海村)のJRR-3M,JRR-4と,京都大学原子炉実験所(KUR)(大阪府・熊取)の3基です。両施設ともに,放射線測定を行うための設備や放射化学的中性子放射化分析(RNAA)を行うために必要な化学実験室(ホットラボ)を備えています。 |
●原研の研究炉(JRR-3M,JRR-4)を利用する場合
原研の窓口は研究炉部です。利用申し込みに関しては業務第二課,技術的な相談窓口は利用課になっています。大学関係利用者の窓口として東京大学原子力総合研究センター・全国共同研究部門(大学開放研究室)があります。大学関係や研究所,企業など所属機関によって利用手続きが異なります(大学開放研究室を窓口とした公募は10-11月締切)。詳細な利用手続きについては,放射化分析研究会会誌No.13,あるいはそれぞれのホームページを見てください。 |
●京都大学原子炉実験所(KUR)の原子炉を利用する場合
全国の国・公・私立の大学および国・公立研究機関などの教官,研究者,ならびにこれに準ずる正規職員による共同利用の公募が実施されています(11月上旬に年間利用の公募締切,下半期のみの応募も可能)。窓口は共同利用掛です。詳細な利用手続きについては,放射化分析研究会会誌No.14,あるいはホームページを見てください。 |
2.【 即発ガンマ線分析(PGA) 】
PGAを行うためには,試料を原子炉で中性子照射しながら,専用のシステムで照射中に試料から放出される即発ガンマ線を測定しなければいけません。そのため,国内でPGAが行える施設は原研のJRR-3Mだけです。大学関係利用者の窓口として東京大学原子力総合研究センター・全国共同研究部門(大学開放研究室)があります(大学開放研究室を窓口とした公募は10-11月締切)。 |
3.【 光量子放射化分析(PAA) 】
PAAでは電子線ライナックを使用します。国内でPAAに利用できる施設は,東北大学理学部附属原子核理学研究施設(核理研[LNS])(宮城県・仙台)の300MeV電子線ライナックと京都大学原子炉実験所(KUR)の30MeV電子線ライナックです。LNSでは,照射設備が常設されていますが,KURについては常時放射化分析が行えるようにセットアップされておらず、マシンタイムの都度照射設備を準備することが必要です。両施設共に利用するためには共同利用係に共同利用実験を申請します。 |
4.【 荷電粒子放射化分析(CPAA) 】
CPAAではサイクロトロンを使用します。照射設備の準備など,中性子放射化分析に比べると、利用者自らで準備しなければならないことが多いのが現状です。国内でCPAAが利用できる施設には,日本アイソトープ協会 仁科記念サイクロトロンセンター(岩手県・滝沢村)と,東北大学サイクロトロンRIセンター(宮城県・仙台)があります。仁科記念サイクロトロンセンターでは,軽元素の分析を行うことができるようになりました。また、依頼分析は住重試験検査が行っています。東北大学サイクロトロンRIセンターは,学内共同利用施設ですので東北大学の教官の方と共同で課題を申し込む必要があります。 |
リンク先
NAA | |
日本原子力研究所(原研) 研究炉利用ホームページ | |
http://rrsys.tokai.jaeri.go.jp/default.shtml | |
NAA, PGA | |
東京大学原子力総合研究センター全国共同研究部門(大学開放研究室) | |
http://kaihoken.tokai.jaeri.go.jp/Home.htm | |
NAA, PAA | |
京都大学原子炉実験所(KUR) | |
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp | |
PAA | |
東北大学理学部附属原子核理学研究施設(LNS) | |
http://www.lns.tohoku.ac.jp/ | |
CPAA | |
東北大学サイクロトロンラジオアイソトープセンター(CYRIC) | |
http://www.cyric.tohoku.ac.jp/index-j.html |
有料で放射化分析による元素分析を行ってくれる窓口
NAA | ||
(財)日本分析センター 管理部業務課: | http://www.jcac.or.jp/ | |
CPAA | ||
(株)住重試験検査: | http://www.shiei.co.jp |
※(財)放射線利用振興協会は平成16年3月末日をもって放射化分析事業を停止いたしました。