Q:様々な放射化分析法があるけど,それぞれの利点はどんな所にあるの?

A:様々な放射化分析法における利点は以下の通りです。

機器中性子放射化分析(INAA):
1. 試料の形状に制約がなく,少量の試料でも多元素同時分析が可能である。
2. 複雑な化学操作を必要とせず,多数の元素が同時に分析できる。
3. 化学操作を行わないので,不純物の混入の恐れが少ないこと。
4. 検出感度が優れている。数ppb程度まで分析が可能である。
放射化学的中性子放射化分析(RNAA):
1. INAAでは分析が困難な元素も定量が可能となる
2.

測定感度や正確さ(確度)を高めるのに有効である。共存する多元素から化学分離して放射化学的に精製するため,検出限界は単純に中性子束と照射時間に依存する。

3. 照射後に化学操作を行っても,他の元素分析方法で問題となるような試薬から目的元素が混入することによって生じる測定結果の系統誤差の心配がない。通常の化学分析法では測定に至るまでの化学操作で外部からの物質の混入(汚染)があると,分析すべき試料と区別できないので,分析値は真の値よりも大きくなる。照射後RNAAの場合は,放射化して目的元素の一部を放射性物質として印を付けて区別するので,このようなことは起こらない。また,化学操作の途中で目的元素の一部を損失した場合,多くの分析法では真の値より小さい値を与える。RNAAでは分離操作を行う前に目的元素の一定量を担体として加える。これによってたとえ目的元素が超微量にしか存在しない場合にも,試料中の元素と担体との間で平衡が成り立てば,化学操作中に試料の損失があったとしても操作終了後に担体の回収率を求めることにより目的元素の化学収率を求めることができる。
中性子即発γ線分析(PGA):
1. 原子炉照射で行うNAAでは分析が困難なH,B,Si,P,S等の軽元素の分析を非破壊で行える。
2. 環境で有害な元素Cd, Hgの分析に有効である。
3. 希土類元素の分析に有効である。特に,B,Cd,Sm,Gd,Euに対して高感度であり,その検出限界はngレベルと低い。
4. 照射後,試料の誘導放射能が無視できるほど低い。
光量子放射化分析(PAA):
1. 高エネルギーの光子は試料中での透過性が大きい。このため,種々の組成を有する試料であっても試料全体を放射化できる。また,同時に多数の試料が照射できる。
2. (n,γ)反応を使った放射化分析では反応断面積が著しく大きい元素が共存すると,自己遮へいが生じたり,強い生成放射能のために微量元素の分析の妨げとなる場合がある。PAAではこのような問題は生じない。
3. 重い元素ほど反応が起きやすいことから,天然物試料のように多量の軽元素と微量の重金属を含む試料に対し,存在比に見合ったバランスのとれた感度で多元素分析が行える。
4. NAAでは定量が難しいとされるMg, Ti, Ni, Y, Zr, Nb, I, Tl ,Pb等を非破壊分析できる。