平成15年10月3日
京都大学原子炉実験所
所長 代谷 誠治殿
日本放射化分析研究会
代表幹事 海老原充
京大炉運転継続に対する要望書
日本放射化分析研究会は放射化分析を分析手法として利用する研究者を中心に1995年に発足した団体です。現在会員数200を数え、会誌の発行、研究会の主催等の活動を通じ、放射化分析に関する情報を会員間で共有し、研究・教育活動の発展を図っています。放射化分析は、今や分析法として充分確立した手法となっていますが、近年新たな展開を遂げつつあり、分析化学・放射化学的側面からの研究が活発に進められています。その一方で、多元素を非破壊で分析可能なこと、そのうえ感度・確度の高い分析値が得られること、等の分析上の特徴から、環境科学、地球科学から、医学、農学等に及ぶ広い研究分野でかけがえのない分析法として利用されています。
近年、国内のいくつかの研究用原子炉の休止、停止に伴い、放射化分析に利用できる中性子照射の場が少なくなりつつあります。現在のところ、原研(東海研)にあるJRR-3M、JRR-4の2基に京大炉を加えた、計3基の原子炉が利用できるに過ぎません。放射化分析に利用可能な研究炉という点では、京大炉は西日本で唯一であるという地理的重要性に加え、大学が管理・保有する我が国で唯一の研究炉である点に重要な意義があると思います。新法人設立後の原研での教育一般に対する配慮が極めて不透明な中、大学の炉がこれまで果たしてきた原子力、放射線教育に対する貢献度は、今後ますます重要になってくることは間違いなく、京大炉に大きな期待が懸けられるところです。
このような状況から貴研究所原子炉の将来計画に対しては大きな関心を寄せるところですが、これまで京大炉に対して様々な計画案が議論されてきていたなか、最近、炉の廃止をも視野に入れた、大変悲観的な将来計画案も議論されていると聞きます。これまでに京大炉が放射化分析の研究やそれに伴う教育面で果たしてきた実績や、また、今後も同じように、あるいはこれまで以上に果たすことが予想され、期待される重要性を考えると、京大炉の運転停止・廃止は、放射化分析に直接係わるものはもとより、放射能・放射線に係わる多くの研究者、研究分野に非常に大きな損失をもたらすことは必定です。このような状況をお考え頂き、京大炉が今後もこれまで同様、円滑かつ健全に運転されることを、本研究会会員とともに強く要望致します。