平成20 年11月285日

京都大学原子炉実験所の共同利用の継続についての要望

京都大学原子炉実験所

所長　代谷誠治　殿

日本放射化分析研究会

代表幹事　海老原充

　　平素より日本放射化分析研究会の活動にご理解を頂き，感謝申し上げます．ご承知かと存じますが，日本放射化分析研究会は放射化分析を利用する研究者が中心となって組織した研究会です．本年で結成以来13年が経過し，会員も賛辞会員6団体を含め，約200人を数えるまでになりました．この会員の中には放射化分析の分析法としての研究開発に携わるもの者から，分析法を用いた周辺分野での応用研究を行うもの者まで，非常に幅広い分野の研究者が含まれます．放射化分析研究会はこのように分野横断的，あるいは学会横断的な会員構成を示す点に大きな特徴があります．

　　放射化分析には核反応を誘起させるための大型の施設が必要とされます．放射化分析の中では中性子放射化分析が最も良く利用されていますが，この中性子源としては通常，研究用原子炉が利用されます．日本国内で中性子放射化分析に利用できる研究用原子炉は現在，東海村の日本原子力研究開発機構原子力科学研究所にある3号炉，及び4号炉と，貴実験所の原子炉（以下，京大原子炉と略称）の3基になりました．このような状況の中で，原子力機構の4号炉は現在反射体の不具合を修理するために昨年末より運転を中止しており，また，京大原子炉は燃料ウランの低濃縮化ウラン燃料炉心への移行作業のために運転を停止していることから，中性子放射化分析を行うもの者としては残された1基の原子炉の運転に頼らざるを得ないという，非常に厳しい利用状況にあります．

　　研究用原子炉の稼働状況から伺える通り，日本の放射化分析を取り巻く環境は時代と共に大きく変化しております．そのような中でも，放射化分析の分析法としての需要はほとんど変わりがなく，一面ではむしろその必要性が増している状況にあります．京大原子炉は平成21年度の比較的早い時期に運転が再開される予定とお聞きしており，その再開によって研究用原子炉を取り囲む巻く現在の厳しい状況が大幅に改善されるものと大いに期待するところです．

　　従来の京大原子炉の利用にあたってはその共同利用制度が非常に重要な役割を果たしてきたことは言うまでもありません．京大原子炉の共同利用制度の大きな特徴は原子炉を設置している組織が共同利用制度を運営していることにありで，その結果として，利用者に優しい，効率的な共同利用が実現されてきました．貴研究実験所原子炉再開後においても，これまでの全国共同利用制度を維持して頂き，原子炉の効率的な利用を推進して頂くことを切にお願いする次第です．上記の通り，貴研究所炉京大原子炉は今や日本にとってかけがえのない財産でもあり，今後，少しでも長く共同利用に供して頂きたくことは放射化分析研究会の会員全員の願いでもあります．何卒宜しくご理解の程をお願い申し上げます．

　　最後に，本研究会として，貴実験所が学校教育法施行規則の改正により設置される「共同利用・共同研究拠点」として認定されることを切に願っていることを申し添えます．