49回放射化学討論会 放射化分析分科会報告

 

開催日時:平成17年9月30日(金) 12:10~14:00

開催場所:金沢市観光会館B会議室

参加者:約30名

世話人:金沢大院医系 天野良平、東大院総合  松尾基之

 

議事内容:

1部 

小村和久先生(金沢大学自然計測応用研究センター低レベル放射能実験施設)による「極低レベル放射能測定と放射化分析-環境中性子・宇宙線・原爆による放射化-」と題する講演が行われた。講演の内容は、放射化分析の基本的なことから始まり、天然の照射源である宇宙線や土壌、岩石中の核反応などの説明、或いはそれら低フラックスにて照射するターゲット(分析試料)への着目、更には、そのような生成核種の濃度が極めて低い放射化を行っていく際に必要不可欠である尾小屋地下測定施設の説明など、大変興味深いものであった。後半では、小村先生がこれまで手がけられてきた「60Co,152Eu による原爆中性子評価の実測値と計算値の不一致問題の解明」,「天然の152Eu発見」、「JCO臨界事故の環境影響評価」,「原爆線量評価」などの研究成果を説明された。最後に小村先生の宝とも言うべき「尾小屋地下測定施設」の将来計画の説明があり、大変有意義な講演であった。

 

2部

2部は「放射化分析研究会からのお知らせ」とそれに関連する質疑応答が行われた。

内容は下記の通りである。

1.「京都大学原子炉実験所と韓国原子力研究所KAERIの協力研究」と題して,京大炉の高宮幸一先生からKURの今後の動向及び韓国原子力研究所の研究炉HANAROの共同利用の話題を頂いた。HANAROは高中性子束な原子炉でありほぼ一年中利用可能といった利点があるが、KAERI側の検出器やスタッフの人数の不足や試料の返却(RIの国際輸送の問題)など、まだ解決すべき問題点が多いとの見解も報告された。また、2005年10月からHANARO利用研究のための公募が開始する予定であること、2006年4月からは実際に協力研究を開始する予定であることなどが紹介された。

 

2.澤幡幹事より「放射化分析研究会事務局から研究用原子炉の現状報告と共同利用の将来」と題する報告があった。その中で、2004年度の会計報告が行われ、出席者の了承が得られた。また、平成17年10月1日より日本原子力研究所と核燃料サイクル機構が統合されることに伴い、組織改変の話題が提供され、新たに発足する独立行政法人日本原子力研究開発機構(原子力機構と略称する)の組織図が発表された。それに補足して原子力機構における試験研究炉の役割として重要な研究施設・設備で、外部から利用ニーズが高い施設・設備については、利用支援体制を整備し、研究者や企業等に対する共用の促進を図る、との方針が打ち出されたとの報告があった。それを受けて、原子力専攻としては現行する共同利用の体制は大きく変わることがないとの報告があった。

 

3.続いて、日本原子力研究所の大島真澄氏及び首都大学東京の海老原充先生より「多重即発ガンマ線分析の開発状況と今後の計画について」と題する報告があった。報告はJRR-3における多重即発ガンマ線分析の現状と計画、及びJ-PARCにおける今後の計画という二つのテーマに分かれており、前者では、多重即発ガンマ線分析装置にオートサンプルチャンジャーが装備されたこと、クローバー検出器が3台装備されたことが報告され、更には、文科省公募型特会事業「革新的原子力システム開発」によりクラスター検出器を2台、クローバー検出器の4台を整備する準備があることが報告された。また、現在のところ予定していた感度が得られないなどの問題点も報告された。また、今年度中に世界最高速のデータ収集系の開発も行うことが合わせて報告された。後半では、今後の開発計画と将来の利用についての提案がなされ、二法人統合後の組織的な対応が不安定であるなど問題点も報告された。最後に多重即発ガンマ線分析装置の全システム完成までの期間として約3年はかかるとの報告があり、関係者に対してより一層の協力依頼があった。

次に2つ目のテーマであるJ-PARCにおける今後の計画が報告され、J-PARCの工事進捗状況の説明と2007年後半のビーム入射に向けたタイムスケジュール、J-PARC中性子核反応実験装置の共同提案と今後の課題などが報告された。また、ビームライン実現に向けて「新規JST公募原子力システム研究開発事業」への提案を行い、現在書類審査をパスした旨の報告があった。

 

4.その他として、大浦幹事より放射化分析研究会機関紙「放射化分析No.19」の編集状況が報告された。No.19は特集として「海外放射化分析施設-韓国原子力研究所-」が掲載され、研究会報告としてHANARO2005、NAMLS8、FNCAなど、動向として「KAERIの研究用原子炉HANAROと京都大学原子炉実験所との協力研究の紹介」、「MTAA-12招致活動状況」などが掲載され予定であることが紹介された.総じて韓国原子力研究所との協力関係など国際的な情報を紹介する内容になる模様であるとの報告があった。また,海老原代表幹事よりMTAA12の招致状況と準備活動の報告、片山幹事より京都大学原子炉実験所専門研究会(「京都大学原子炉実験所での放射化分析と今後の中性子利用分析」)が12月21日(水)、22日(木)の両日に,放射化分析研究会「冬の学校」をかねて行われる予定であるとの報告があった。